私とあなたは、同じものを見て、聴いて、感じているとは限らない。
他者にフィードバックするときは、「他者フィードバックの壁」を意識することが大切。
私とあなたで見えるものは同じ?
例えば目の前にリンゴがあるとします。
私とアルパッカさんで同じものを見ていると思いますか?
同じリンゴをみているなら、当然同じものを見ていると思います。
それはその通り。言い換えましょう。
目の前にあるリンゴを見て、私とアルパッカさんは同じことを考えて、同じような感情を持ちますか?
ん?どういう意味でしょう?
例えば、実家が青森のリンゴ農家のカピバァラは、このリンゴを見て、「このリンゴの種類は王林だな」とか「久しぶりに青森に帰って『せんべい汁』たべてえなぁ」とか考えて、懐かしい気持ちになるかもしれません。
ふむふむ、ありそうな話ですね。
っていうか、カピバァラ所長は青森出身なんですか?
実はね。。まあ、話を続けましょう。
でも、おなかがすいているアルパッカさんは、このリンゴを見て「うまそ~」、「腹減った~」なんて考えて、よだれが出ておなかがグ~ッとなるかもしれません。
否定したいけど、いまリンゴをイメージしたら、おなかがすいていて同じ反応しているので否定できません。
難しい話はいったん置いておいて、リンゴでも食べておやつにしませんか?
そうですね。リンゴとアップルパイありますので、おやつにしましょう。
イエェェイィ!
ダメ元で言ってみるものですね!
みんな違っている「視覚、聴覚、体の感覚」
以前、以下の記事で「視覚、聴覚、体の感覚」について説明しました。
以下のリンクを参考にしてください。
基本的な考え方を復習しましょう。
私たちが世界を認識するための感覚機能のうち、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五種類の分類を五感といいます。
これらのうち、触覚、味覚、嗅覚を体の感覚としてまとめると、人間には視覚、聴覚、体の感覚の3種類の感覚があるということができます。
- 視覚:何が見えていますか?
- 聴覚:何が聞こえていますか?
- 体の感覚:どんな匂い、味、感触を感じていますか?
人の感覚は人それぞれです。
同じもの、たとえばリンゴを見ていたとしても、同じ部分やポイントを見ている(視覚)とは限りません。
同じリンゴを見ているとしても、思い浮かぶ言葉(聴覚)が同じとは限りません。
同じリンゴを見ているとしても、体に起きる感覚(体の感覚)が同じとは限りません。
これが人の感覚の特徴です。
私とあなたは、同じものを見て、聴いて、感じているとは限らない。
他者フィードバックの壁
人は五感で感知した情報を脳に送って、言葉や知識をつかって情報に意味づけをしていきます。
フィードバック、コーチングの場面では、視覚、聴覚、体の感覚を、クライアントのゴール設定やギャップの確認に使うことができます。
- 「過去」の出来事で、何を見て、何を聞いて、何を感じたか。
- 「現在」、何を見て、何を聞いて、何を感じているか。
- 「未来」のゴールを達成するときに、何をみて、何を聞いて、何を感じているのか。
これらを視覚によってイメージし、言葉によって言語化し、体の感覚を探っていくことで、様々な情報が得られます。
前に説明した自己フィードバックモデルは以下のような図で示されていました。
まだ目標を達成していない現在の「視覚、聴覚、体の感覚」と、未来に目標を達成している時を想像したときの「視覚、聴覚、体の感覚」を比べることで、人の意識は自分の目標にに到達しやすくなります。
他者フィードバックモデルは以下のちょっとカラフルな図で説明できます。
現在の自己フィードバックをする赤のAさんと、目標・理想の姿として青のAさんが未来に存在しています。
その自己フィードバックモデルの外側に、外部から現在の赤いAさんに他者フィードバックする緑のBさんが登場しています。
自己フィードバックする赤のAさん、外部から他者フィードバックする緑のBさんは、お互いに目標・理想の姿である青のAさんを見ながらフィードバックしています。
いわゆるコーチングのように他人にフィードバックする場合は上の図のような関係になります。
以下にそれぞれのフィードバックをまとめます。
- ①自分(赤いAさん)の理想である青いAさんを認識する
- ②現状の自分(赤いAさん)に自己フィードバックする
- ①他者(赤いAさん)の理想である青いAさんを、外部からBさんの感覚で認識する
- ②現状の他者(赤いAさん)に外部から他者フィードバックする
ここで「他者フィードバックの壁」が存在することがわかります。
実は、未来の理想の姿(青いAさん)は、現在の自分(赤いAさん)も外部の緑のBさんも、正確にはよくわかりません。
さらに、現在の自分(赤いAさん)と外部の緑のBさんが、同じ未来の理想の姿(青いAさん)を見て、聴いて、感じているかはわかりません。
なぜ他者フィードバックの壁が問題か
さっきのリンゴの話と同じです。
同じリンゴ(未来の理想の姿・青いAさん)を見ていても、現在の自分(赤いAさん)も外部の緑のBさんも、同じものを見て、聴いて、感じている訳ではないのです。
だから、それぞれがフィードバックしようと思っても、違う理想の姿を視ていた場合、適切なフィードバックは難しくなります。
自己フィードバックする現在の自分(赤いAさん)は、違う理想の姿を見ている外部の緑のBさんからフィードバックを受けても、ちんぷんかんぷんで受け取ることができなくなります。
ここに、クライアント本人(赤いAさん)とコーチ(緑のBさん)が、クライアントの未来の姿(青いAさん)を共有できていないことによるコミュニケーションの壁が存在します。
クライアント本人(赤いAさん)は、違う理想像を見ながらちんぷんかんぷんなフィードバックをするコーチ(緑のBさん)のいうことを受け入れられません。
コーチ(緑のBさん)は、よかれと思ってクライアント(赤いAさん)にフィードバックしているのですが、クライアントが受け取らないため気分を害してしまいます。
これがフィードバックを受けるクライアント、フィードバックをするコーチの間で、コミュニケーションがうまくいかなくなる「壁」の原因の一つです。
次の記事では、コミュニケーションの壁が起きづらくなるためのメッセージの伝え方を説明します。
まとめ
この記事をまとめます。
私とあなたは、同じものを見て、聴いて、感じているとは限らない。
他者にフィードバックするときは、「他者フィードバックの壁」を意識することが大切。
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