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あなたのなりたい自分は?~「ニューロロジカルレベル」で深層心理の目標設定しよう

人の深層心理を知るためのコミュニケーションモデル

アルパッカさん

コミュニケーションのモデルって、説明聞くまえは難しそうだと思いましたけど、「GEOモデル」「タイムライン」「視覚、聴覚、体の感覚」って、どれも普段私たちが当たり前にやっていることをわかりやすく説明してもらった感じですね。

カピバァラ所長

コミュニケーションの達人のやりかたを理解することがモデル化の目的です。

達人とはいえ同じ人間、理解するのは難しくないと思います。

カピバァラ所長

でも、いまから説明する「ニューロロジカルレベル」はちょっと難しいかもしれません。

でも、理解すれば人の深層心理を理解することができるようになって、「コミュニケーションの達人」に近づくことができます。

頑張って勉強してください。

アルパッカさん

ひゃ~~!難しいのは苦手ですが、頑張ります!!

ニューロロジカルレベル

人の意識を6段階のレベルに分類して、その人の可能性を広げることができる心理学的なモデルがあります。

これを「ニューロロジカルレベル(Neuro-Logical Level)」といいます。

ニューロロジカルレベルは、米国のロバート・ディルツ氏が体系化した人間の意識モデルです。

通常、人の意識はそれぞれのレベルが混ざり合って、なりたい自分というゴールや、抱えている問題・課題というギャップが複雑にからみあっていることが多いです。

それをニューロロジカルレベルの考え方で意識を区別化すると、各レベルでの問題が明確になり、また各レベルでどうなりたいかというゴールも明確になります。

ニューロロジカルレベルでは、人の意識を環境、行動、能力、信念・価値観、自己認識、スピリチュアルの6段階に区別化します。

ニューロロジカルレベルを図示すると以下のようになります。

FBCラボ_fig5_NLL

【参考文献】

ロバート・ディルツ氏のNLPコーチングの集大成といえる本です。

ニューロロジカルレベルをどのようにコーチングに活用したらよいかが理論的にかつわかりやすく説明されており、私はプロのコーチとして自分のコーチング戦略を大幅にレベルアップする事ができました。

ニューロロジカルレベルの各レベル

それではニューロロジカルレベルの各レベルについて、前の図の下側から順番に説明していきます。

(1) 環境(Where, When)

環境とは、いま自分がいる場所や周りの様子としてとらえられます。

周りには何が見えますか。誰がいますか。どういう声や音が聞こえていますか。そして体はどんな感じでしょうか。

(2) 行動(What)

行動とは、いま、自分が何をしているか、どんな行動をとっているかということです。

ご飯を食べている、会社で仕事をしているなど一つの行動をとっている場合や、音楽を聴きながら散歩をしているなど、同時に複数の行動をとっている場合もあります。

(3) 能力(How)

能力とは、行動を起こすために、自分がどのような能力を発揮しているかということです。

自分の才能や、知力、知識、持っている資源(リソース)なども当てはまります。

英語を話す能力、専門的な仕事を行う能力など、いわゆる「高度な能力」に限定されることなく、たとえば話すときに声を出す能力、散歩の時に歩く能力など、私たちが「当たり前に有している能力」も考えます。

いまはまだ身につけていないけれど、これから学んで身につける能力、あるいは行動計画や戦略も該当します。

さらに、自分が知らない能力、まだ発揮していない能力も探索していくことができます。

(4) 信念・価値観(Why)

価値観とは、自分にとって価値があると認めるもの、大切にしていることです。

信念とは、自分が意識的無意識的信じていることです。

たとえば「世界平和を達成する」、「顧客に満足を創り出す」のような崇高な信念もありますが、自分に対する思い込みなどネガティブな影響を及ぼすものもあります。

信念・価値観は、能力を発揮して行動をするかどうかの動機や、自分に対する許可になると言われています。

「~すべき」、「~すべきでない」というような考え方が一例です。

どんなに能力が高く、素晴らしい行動ができる人であっても、信念・価値観のレベルで「いまそれをやるべきではない」という信念や思い込みをもっていると、実力を発揮することは難しいです。

逆に、信念・価値観レベルで「いまそれをやりたい」「手に入れたい」と考えている場合には、目標が達成する可能性が高まります。

(5) 自己認識(Who)

自己認識とは、自分が何者で、どんな役割をもっているかということです。

世の中で大きな役割を果たす場合のいわゆる「ミッション」もこのレベルに当てはまります。

自分の所属する組織や相手によって、自分の役割は相対的に変化していきます。

例えばAさんは会社では人事という役割をもっていたり、上司や部下という役割がある場合もあります。

また、Aさんは家族の中では父親、母親、あるいは子供といった役割もあります。

このように人はさまざまな役割、自己認識を持っていて、それを使い分けて日常生活を送っています。

人は、いま達成しようとしている目標に対して、適切な自己認識を持つことよって、ゴールを達成しやすくなります。

(6) スピリチュアル

スピリチュアルとは、自分という一人の意識を超えた意識レベルを指します。

人生における大きな「ビジョン」に対する意識はこのレベルになります。

キリスト教文化が色濃い英語で体系化されたモデルなのでスピリチュアルという言葉が用いられていますが、日本で一般的に理解されている神や仏など宗教的な意味に限定されるのではなく、自分が所属する会社や団体、地域、社会、家族、チームのような、自分一人を超えた、自分と複数の人が所属するグループのような意味で捉えていただければわかりやすいと思います。

チームスピリットという言葉がありますが、このときの「スピリット」と同様の意味です。

自分の存在が所属するグループにどのような影響を与えるか、どのような影響を与えられるかなどを考えていきます。

ニューロロジカルレベルによる個人の分析

カピバァラ所長

それではニューロロジカルレベルによる人の意識の分析を理解するため、例題として「私自身」を分析してみましょう。

話をわかりやすくするために(6)スピリチュアルは割愛して、(1)~(5)のレベルで説明していきます。

仕事:フィードバック・ラボ所長

まずは仕事の面での分析です。私はフィードバック・ラボの所長として働いています。

(1) 環境(Where, When)

フィードバック・ラボに勤務し、オフィスで複数の所員に囲まれています。オフィスにはクライアントとのセッションをする部屋があります。

(2) 行動(What)

クライアントとのコーチングセッション、カウンセリング、メールによる相談、講演活動などを行っています。

(3) 能力(How)

コーチング、カウンセリングの能力とともにフィードバックに関するオリジナルな理論を有しています。

(4) 信念・価値観(Why)

クライアントの幸せを大切にしたいです。世の中がさらに笑顔であふれるようにフィードバックとコーチングで支えていきたいです。

(5) 自己認識(Who)

フィードバック・ラボ所長であり、フィードバックで人を幸せにするコーチです。

家庭:夫、父親

そんな私は、家に帰れば妻と小学生の二人の子供がいる父親です。

(1) 環境(Where, When)

郊外の戸建て住宅に住んでいます。私は水辺が好きなので、家の近くには川が流れています。

(2) 行動(What)

毎日、子供達と遊び、勉強のサポートをして、妻と家事を分担しています。

(3) 能力(How)

家族を支える経済力、子供達と楽しく過ごすコミュニケーション力などを有しています。

(4) 信念・価値観(Why)

家族の笑顔が大切です。子供達の可能性を信じています。

(5) 自己認識(Who)

家族とともに幸せに生きる父です。妻に対しては誠実な夫でありたいです。

趣味:サッカーのコーチ

実は学生の頃サッカーをやっていて、週末は小学生向けのサッカーチームのコーチをやっています。

(1) 環境(Where, When)

週末に小学校の校庭で練習します。コーチは5名、生徒は30名です。

(2) 行動(What)

チームの能力が上がるように基礎トレーニングを行い、小学生向けの基本的な戦術を教えています。

(3) 能力(How)

学生時代に学んだサッカーの技、プロサッカーをTV観戦して覚えた多彩な戦術などがあります。

(4) 信念・価値観(Why)

基礎からトレーニングすれば、みんなサッカーが上手になると信じています。

(5) 自己認識(Who)

基礎からわかりやすく教えるサッカーコーチです。

他にも、学校で教える先生地域で生活する市民、私の両親の立場からでみれば子供、大学の恩師からみれば研究室の卒業生としての自己認識、などなど、一人の人間にはそのときの状態によって複数の自己認識が存在しています。

複数の自己認識(アイデンティティ)

私がもっている自己認識(アイデンティティ)をまとめてみましょう。

  • フィードバック・ラボ所長
  • 夫、父親
  • サッカーコーチ
  • 先生
  • 市民
  • 子供
  • 研究室の卒業生

当然ですが、いま書いた自己認識以外にもいろいろあります。

人間は、そのように複数の自己認識を有していて、そのときどきにまるで仮面を付け替えるようにして自己認識、すなわちアイデンティティを変化させます。

その場にあった自分のアイデンティティを選び、相手がどのアイデンティティでいるのかを考えないと、相手とのコミュニケーションがうまくいかない場合があります。

「サッカーコーチ」と「父親」

例えば「サッカーコーチ」のとき、チームに息子がいたからって「父親」として接した場合は他の生徒と平等にコーチできるかどうかわかりません。

あくまで「サッカーコーチ」として、チームの「生徒」としての息子と接する必要があります。

「子供」と「大人」

私はごらんのとおりオジさんですが、それでも実の親から見れば「子供」であることは代わりません。

親が自分の子供が大人になったことを理解して「大人」として接すれば問題は無いですが、いつまでたっても「子供」扱いされていると、よくわからない小言を言われたり、いきなり怒られたり、理不尽な対応をされることがあります。

これは親が私を「子供」というアイデンティティで見ているのに対し、私自身は社会に出ている「大人」としてのアイデンティティで対応しているためのコミュニケーションのエラーです。

「会社員」と「個人」

最近は会社で出世して管理職になりたがらない人も増えてきていると聞きます。

会社の「上司」としては、その方(Aさん)の能力を認めて、会社のために貢献する「管理職」として推薦しているのですが、当のAさん本人は会社のために「管理職」になるよりも、ほどほどの給料をもらいながら「個人」としてストレス少なく家庭や趣味を大切にして生きていきたいと考える場合もあることでしょう。

これは「上司」の考える「会社員」とAさん「個人」のアイデンティティの違い、「会社が大切」と「家庭や趣味が大切」という価値観の違い、結果として「管理職になりたい」ことと「家庭や趣味を大切にする人生を送りたい」という目標の違いなどが見て取れます。

いわば、「上司」は「会社員」であり、「会社が大切」であり、「管理職になること」が目標であるという考えをもつ人であり、管理職に推薦されたAさんは「個人」であり、「家庭や趣味が大切」であり、「家庭や趣味を大切にする人生を送りたい」という考えをもっているともいえます。この場合、二人の考え方はなかなか一致しない可能性が高いです。

これもミスコミュニケーションの一例です。

このようにニューロロジカルレベルを理解すると、コーチングの際にさまざまな有用な情報を得ることができます。

ニューロロジカルレベルの各レベルの関係

ニューロロジカルレベルはピラミッドのような形で表現されています。でも、上のレベルと下のレベルのどちらが上位であるという訳ではありません。

それぞれのレベルはお互いに影響を与えていていると考えられます。

ただし、下のレベルである環境や行動の変化が、上のレベルである信念・価値観や自己認識を変えることはあまりないといわれています。

反対に、上のレベルが変化すると、自然に下のレベルが変化することが経験上わかっています。

自己認識や信念・価値観が変化することによって、行動や環境も変化が起きることが多いです。

上のレベルが変化すると、それまで問題だと思っていた下のレベルの問題が、自然に解消することがあります。

FBCラボ_fig5-1_NLL

このように、コーチングやカウンセリングに際して、ニューロロジカルレベルによる意識の区別化を活用して、あえて信念・価値観や自己認識のレベルについてフィードバックする事で、人の意識の変化を効果的に促すことができるようになります。

ただし、信念・価値観や自己認識レベルのフィードバックを行うことは注意が必要となります。それにつきましては後で説明します。

スピリチュアル:自分を超えた意識とチームスピリット

ニューロロジカルレベルの(6)スピリチュアルは、「自分を超えた意識」を示しています。

「自分を超えた意識」とは何でしょうか?

それは自分が所属している組織、チームなどを表現しています。

ニューロロジカルレベルの自己認識から環境までは、一人の人間の意識のレベルをモデル化しています。

しかし、人は一人で生きているわけではなく、自分が所属する会社や団体、地域、社会、家族、チームのような、自分一人のを超えた、自分と複数の人がいるグループに必ず所属しています。

そのような自分を超えた、自分の所属するグループに意識を向けることで、構成メンバーである個人にも気づきや発見が生まれることがあります。

例えば、会社で仕事が忙しくて毎日残業、休日出勤もあり大変な状況であっても頑張っている人がいるとします。

周りから見たらなぜそんなに頑張っているかわからないとしても、本人は自分が所属する職場のチームみんなが頑張っているので、チームの成果を出すために頑張れているかもしれません。

これはチームが一丸となって成果を出すというスピリチュアルなレベルの関係性です。

スポーツでもチーム競技の場合には、個人プレーだけではなく自分を犠牲にしてでもチームの勝利のために貢献するという行動があります。

まさにチームスピリットです。

問題を抱えている人の中には、自分が一人きりだと考えて周りが見えていないことがあります。

そのとき、自分を超えたチームや組織、チームに所属する他の人を意識させることで、問題意識が変わることがあります。

チームの一員だと気づくことで、自分がチームに対してどのような影響を与えられるか、自分はチームからどのような影響を受けているか、といった意識に気づき、問題を解決するためのきっかけを得ることがあります。

また、ニューロロジカルレベルの考え方は、一人の人の意識を分析するときのみならず、会社、組織、チームなどをあたかも人間のような存在として分析することもできます。

よく企業のホームページなどに掲げられている、法人としてのミッション、ビジョン、バリューのような経営理念はニューロロジカルレベルの分析によって創ることができます。

モデルとフィードバック

アルパッカさん

学校では「目標をたてることが大切」と教わってきましたが、効果的に目標を達成するための方法、モデルなんて考えたことなかったです。

中学生くらいで目標を達成するためのモデルを知っていたら、もっと成績が良くなって、もっと偏差値の高い大学行けたかもしれませんね。。

カピバァラ所長

まあ、アルパッカさんはまだ学校を卒業したばかりだし、いくらでも成長の伸びしろがありますよ。

何か目標を立てたときに先ほど教えた「GEOモデル」を意識すると、目標達成がしやすくなると思います。

アルパッカさん

はい、フィードバック・ラボで仕事を通して成長して、お給料をたくさんもらうために、使えるモデルはどんどん使っていきますよ!!

アルパッカさん

あ、もう一つのニューロなんちゃらって、また斬新な考え方ですね。

名前も使い方も全然覚えられないんですけど。

でも人の意識を分析する、分類するって、なんかピンとこないです。
分析されるっていうのがちょっと違和感ありますね。

カピバァラ所長

人の抱えている問題って、とても複雑な事が多いんです。

ニューロロジカルレベルの各レベルの問題が混じり合っていて、なかなか適切な対処が見つからないことが多いです。

カピバァラ所長

目標を達成するためには、その目標を妨げている問題を解消するのがコーチングのストーリーなのですが、コーチングでクライアントの話をきく時にニューロロジカルレベルを意識して聞き取りをすると、どのレベルで問題が起きているかが明確になって、対処方法が具体的になるんです。

考え方を理解すればとても使いやすいモデルですよ。

アルパッカさん

そうなんですね、私も食わず嫌いせずにニューロなんちゃらを勉強してみます。

ところでニューロなんちゃらを使えるようになると、お給料が上がったりしますか?

カピバァラ所長

「ニューロなんちゃら」、というか、「ニューロロジカルレベル」なんですけどね。

まあアルパッカさんのフィードバックを活用したコーチング能力が高くなれば、お給料上げますよ。

アルパッカさん

いぃぃやっふぉおお~!、ゲッツ!

・・・ところでフィードバックを活用したコーチングって何でしょう。まだ説明していないですよね。

カピバァラ所長

はい、いままで説明してきた「フィードバックの仕組み」「目標設定のためのモデル」の技術を使って、次は「フィードバックを活用したコーチングの考え方」を説明していきます。

まとめ

本記事をまとめます。

参考文献

私はNLPコーチングを学んでいた頃、ロバート・ディルツ氏のセミナーに参加したことがあります。

彼はすてきな笑顔でセミナールームを暖かい雰囲気にするとともに、卓越した理論とNLPカウンセリング、コーチングのスキルを披露していただきました。

ロバート・ディルツ氏のNLPコーチングは、NLPというコミュニケーション心理学をコーチングにどのように活用するか、コーチ、カウンセラーのみならず、会社で部下と面談をするとき、子供の成長を促すための関わりを考えるために、多くの示唆を与えてくれます。ご一読ください。

ティム・ハルボムさんもNLPの著名なトレーナーです。

彼のセミナーを受講したことがありますが、温かい雰囲気と理論的なアプローチで大変有意義な時間を過ごしました。おすすめです。

コーチングを学ぶためには、まずは入門書からアプローチしてみてはいかがでしょうか。

以下のシリーズは漫画を使ったコーチングやNLPの入門書で、大変わかりやすい構成となっています。

初歩からコーチングやNLPを学んでみたい方におすすめです。