「問題点」、「課題」は、目的を達成するための「改善点」となる。
「他者フィードバック」の極意は、目的に対しての「良かった点」と「改善点」を伝えること。
他者フィードバックの捉え方
ここまでは自分自身にフィードバックして成長していくための「自己フィードバックモデル」を説明しました。
次は実際のコーチングやカウンセリングの場合の、クライアントに対するコーチやカウンセラーから伝えるフィードバックの考え方をお話ししていきます。
「自己フィードバックモデル」は以下の記事で丁寧に説明していただきました。
フィードバック・ラボでは「自己フィードバック」と区別するために「他者フィードバック」と呼んでいます。
世の中にはいろいろな他者へのフィードバックの考え方があります。
フィードバックは「相手の耳の痛いことを伝える」?
たとえば「他者へのフィードバックはダメ出しだ」という考え方もあります。
それはそれで一つの考え方としてありです。
私が普段からよく読んでいる、「フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」という本では、著者の中原淳先生が
フィードバックとは、「成果のあがらない部下に、耳の痛いことを伝えて仕事を立て直す」部下指導の技術のこと。コーチングとティーチングのノウハウを両方含んだ、まったく新しい部下育成法である。
と定義しています。
この本ではフィードバックの場面として、仕事の上司と部下の関係性で活用する方法を詳細に説明しています。
フィードバックは業績評価の場面などビジネスの現場で使われることが多いですし、「成果の上がらない部下」という問題のあるクライアントに対して、「仕事を立て直す」というのもよくある事例です。
「相手に耳の痛いことを伝える」というのは一種の「ダメ出し」とも考えられます。
この本に書かれている内容は具体的な事例に基づいてわかりやすいですし、実際に効果的な考え方も多く紹介されている良書です。フィードバックをマスターしたい方はぜひ読んでみてください。
中原淳先生の本はとても良い本です。
ただし、ひとつだけフィードバック・ラボの「他者フィードバック」とは捉え方が異なる点があります。
上司が「耳の痛いことを伝える」という信念を持って部下にフィードバックすることは、ときに効果的ではないことがあります。
上司が部下に面談やコーチングする場合を考えましょう。
「耳の痛いことを伝える」という信念・価値観をもった上司(コーチ)は、設定されたゴールと現状のギャップ(課題、問題)を部下に伝える際に、そのギャップは部下(クライアント)にとって「耳の痛いこと」、「問題点」として伝えることになりがちです。
この場合、「耳の痛いこと」、「問題点」を伝えられた部下は、「ダメ出し」されたと感じ反発する可能性があります。
まさに「ダメ出し」されているときの非難されているような感覚を覚える人もいるでしょう。
「問題点」は「改善点」
フィードバック・ラボのフィードバックの捉え方は、クライアントの最終ゴールを明確に具体的に設定して、クライアントの価値観を聞き取りながら、クライアントの自己フィードバック過程を起動して効果的にゴールを達成させていくことを大切にしています。
これがフィードバック・ラボが大切にする「フィードバックの創り出す価値」です。
そのような「フィードバックの捉え方」は我々フィードバックコーチの「価値観」です。
いわゆる他者へのフィードバックの際に「耳の痛いこと」、「問題点」、「ダメ出し」を伝えるという考え方を、それはゴールを達成するための「改善点」であると捉えると、相手の成長を促す意味に変化して、部下への伝え方が変わります。
フィードバック・ラボのフィードバックの捉え方で最も重要なことは、ゴール達成を阻害する「問題点」は、ゴールを達成するための「改善点」となるという価値観です。
この価値観をもってクライアントに接すると、他者へのフィードバックはもはや「問題」や「ダメ出し」ではなくなります。
他者へのフィードバックは、クライアントの成長を促すための「改善点」の助言となります。
「問題点」は、目的を達成するための「改善点」になる。
他者フィードバックの極意は「良かった点」と「改善点」を伝えること
フィードバック・ラボのフィードバックの伝え方は、「目標」に対して、「良かった点」「上手くいっている点」「進捗している点」をまずクライアントに伝えることから始めます。
あなたの「良かった点」は○○です。
そして、「目標」に対して「上手くいっていない点」「進捗が思わしくない点」については、「目標」を達成するためのさらなる「改善点」として伝えます。
この点を改善すれば、目標に近づきます。
こうすればさらに上手くいきます。
このように「改善点」を伝えるとき、他者へのフィードバックはもはや「問題点」「ダメ出し」ではなくなり、クライアントが未来に目標を達成するための「可能性」になります。
- 「問題点」—>「改善点」
- 「ダメ出し」—>「可能性」
このように他者にフィードバックする人(コーチ)が、相手(クライアント)の未来の目標と成長の可能性を意識しながら、「良かった点」「さらなる改善点」を伝えていきます。
他者フィードバックの過程において、クライアントは自分の未来の可能性を見いだし、自己フィードバックを起動して目標に向かって進んでいきます。
まとめ
この記事をまとめます。
「問題点」、「課題」は、目的を達成するための「改善点」となる。
「他者フィードバック」の極意は、目的に対しての「良かった点」と「改善点」を伝えること。