- 工学的フィードバックとは、「出力が入力や操作に影響を与えるしくみ」をいいます。
- 工学的なフィードバックでは、外部(他者)から情報をもたらされることはなく、そのシステム自身が自己にフィードバックする形でモデル化されます。
- 工学的フィードバックでモデル化されるフィードバックシステムを「自己フィードバック」と呼んでいます。
このブログ記事を読んで学べること
前の記事では「言語的、辞書的なフィードバックの定義」について説明しました。
この記事では、「工学的なフィードバック」について説明します。
フィードバックには仕組み、構造があります。
私たちが相手にフィードバックするときに、その仕組みや構造を理解していれば、効果的なフィードバックを行うことができるようになります。
フィードバックの仕組みや構造を知るための方法として、エンジニアリング、工学的なフィードバック制御の考え方を知ることをおすすめします。
この記事で工学的なフィードバックを完全に理解すると言うよりは、雰囲気を知っていただければ十分です。
工学的なフィードバックの定義と事例
工学分野の制御理論と呼ばれる技術で、フィードバックはどのように定義されているか説明します。
厳密な定義ではありませんので、理系の方からの「違うじゃねえか!」的な突っ込みはお許しください。
ある操作をおこなうシステムがあり、そのシステムへの入力(原因)と出力(結果)があり、その出力が入力や操作に影響を与えるしくみがあるとき、これをフィードバック (feedback) システムという。
上の定義で示したフィードバックシステムを簡単な図で表すと以下のようになります。
前の記事で「辞書的なフィードバック」の説明をしました。
辞書的なフィードバックのポイントは
「結果を原因に反映させて自動的に調整していくこと」
であり、工学的なフィードバックの定義と、以下のように当然合致しています。
辞書的フィードバック | 工学的フィードバック |
結果 | 出力(結果) |
原因 | 入力(原因) |
反映させて自動的に調整していく | 出力が入力や操作に影響を与えるしくみ |
工学的自己フィードバックシステム過程
ここでは「工学的自己フィードバックシステム過程」として、以下のプロセスを規定しました。
- 過程0: 結果の目標設定
- 過程1: 現状の結果測定
- 過程2: 目標と現状の結果の違いを認識
- 過程3: 得られた違いを原因にフィードバック
- 過程4: 現状から目標に近づくため機能・資源を利用
- 過程5: システムに影響を与える(過程0にもどる)
- 過程0: 結果の目標設定(必要ならば目標を変えて再設定する)
- ・・・・・・・(以下、望ましい結果を得るまで繰り返す)
上記のように、過程0~5まで進行した後、再び過程0に戻り、望ましい結果を得るまでプロセスを繰り返していきます。
以下に工学的なフィードバックシステムの図を示します。
工学的な自己フィードバックシステムは、時間的に再帰的に連続する過程(プロセス)であり、結果の目標を設定したら、その目標に向けて自動的に操作を修正しながら学習を継続していき、結果的に目標を達成します。
具体的には、過程0から過程5までを行った後、再び過程0に戻って動作を繰り返します。過程0に戻ったとき、結果の目標を修正して再設定することも可能です。
工学的なフィードバックでは、コミュニケーションでよくいわれるフィードバックのように外部(他者)から情報をもたらされることはなく、そのシステム自身が自己にフィードバックする形でモデル化されます。
フィードバック・ラボでは、工学的フィードバックでモデル化されるフィードバックシステムを「自己フィードバック」と呼んでいます。
フィードバックが他者への「突っ込み」だという人からすれば、自己フィードバックは「ひとり突っ込み」みたいなイメージでしょうか。
システムが自己完結しているとも言えます。
事例:エアコンによる部屋の温度調整
近年、猛暑が続いていますが、私たちはエアコンを使用することで室内では快適な生活を送ることができます。
(ちなみに私はカピバラなので、エアコンよりも池で水浴びするのが好きです)
エアコンを作動させて部屋の温度調整をするプロセスは、工学的な自己フィードバックシステムの簡単な事例となります。
例として、室温24度を目標に設定したエアコンで、現在の室温が30℃の場合には、以下のようなグラフ(縦軸:室温、横軸:時間)で室温24度へ近づけていきます。
図に記載されたエアコン動作と室温変化は、以下のような動作です。
- ①結果の目標:24℃に設定する。
- ②温度センサーで室温は30度と測定される。
- ③冷房機能を利用して目標温度に近づける。
- ④冷えすぎで冷房OFFする。
- ⑤24℃以上になったので冷房ONする。
- ⑥冷えすぎで冷房OFFする。
- ⑦24℃以上になったので冷房ONする。
- ⑧冷えすぎで冷房OFFする。
- ・・・・・・・(以下、望ましい結果(室温24℃)になるまで繰り返す)
工学的自己フィードバックシステム過程を用いて上記のエアコン動作を説明すると煩雑になりますので本記事では割愛します。興味のある方は以下のリンクをご覧ください。
まとめ
本記事をまとめます。
- 工学的フィードバックとは、「出力が入力や操作に影響を与えるしくみ」をいいます。
- 工学的なフィードバックでは、外部(他者)から情報をもたらされることはなく、そのシステム自身が自己にフィードバックする形でモデル化されます。
- 工学的フィードバックでモデル化されるフィードバックシステムを「自己フィードバック」と呼んでいます。