- 工学的フィードバックとは、「出力が入力や操作に影響を与えるしくみ」をいいます。
- エアコンの温度制御に使われるフィードバックの考え方を示しました。
- 工学的フィードバックでモデル化されるフィードバックシステムを「自己フィードバック」と呼んでいます。
メインとなるブログページの解説です。
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復習:工学的自己フィードバックシステム過程
「フィードバックとは~工学的な制御のテクニックを知る」では、「工学的自己フィードバックシステム過程」として、以下のプロセスを規定しました。
- 過程0: 結果の目標設定
- 過程1: 現状の結果測定
- 過程2: 目標と現状の結果の違いを認識
- 過程3: 得られた違いを原因にフィードバック
- 過程4: 現状から目標に近づくため機能・資源を利用
- 過程5: システムに影響を与える(過程0にもどる)
- 過程0: 結果の目標設定(必要ならば目標を変えて再設定する)
- ・・・・・・・(以下、望ましい結果を得るまで繰り返す)
上記のように、過程0~5まで進行した後、再び過程0に戻り、望ましい結果を得るまでプロセスを繰り返していきます。
以下に工学的なフィードバックシステムの図を示します。
工学的な自己フィードバックシステムは、時間的に再帰的に連続する過程(プロセス)であり、結果の目標を設定したら、その目標に向けて自動的に操作を修正しながら学習を継続していき、結果的に目標を達成します。
具体的には、過程0から過程5までを行った後、再び過程0に戻って動作を繰り返します。過程0に戻ったとき、結果の目標を修正して再設定することも可能です。
工学的なフィードバックでは、コミュニケーションのフィードバックとはちがって外部(他者)から情報をもたらされることはなく、そのシステム自身が自己にフィードバックする形でモデル化されます。
フィードバック・ラボでは、工学的フィードバックでモデル化されるフィードバックシステムを「自己フィードバック」と呼んでいます。
解説:エアコンによる部屋の温度調整
エアコンを作動させて部屋の温度調整をするプロセスは、工学的な自己フィードバックシステムの簡単な事例となります。
例として、室温24度を目標に設定したエアコンで、現在の室温が30℃の場合には、以下のようなグラフ(縦軸:室温、横軸:時間)で室温24度へ近づけていきます。
図に記載されたエアコン動作と室温変化は、以下のような動作です。
- ①結果の目標:24℃に設定する。
- ②温度センサーで室温は30度と測定される。
- ③冷房機能を利用して目標温度に近づける。
- ④冷えすぎで冷房OFFする。
- ⑤24℃以上になったので冷房ONする。
- ⑥冷えすぎで冷房OFFする。
- ⑦24℃以上になったので冷房ONする。
- ⑧冷えすぎで冷房OFFする。
- ・・・・・・・(以下、望ましい結果(室温24℃)になるまで繰り返す)
工学的自己フィードバックシステム過程によるエアコン動作
工学的自己フィードバックシステム過程を用いて、上記のエアコン動作を見てみましょう。
★1回目のフィードバックプロセス
対応するエアコン動作は以下のとおりです。
- ①結果の目標:24℃に設定する。
- ②温度センサーで室温は30度と測定される。
- ③冷房機能を利用して目標温度に近づける。
過程0: | 結果の目標設定 快適な室温として24度を設定する。 |
過程1: | 現状の結果測定 温度センサーで室温は30度と測定された。 |
過程2: | 目標と現状の結果の違いを認識 現状は目標よりも6度温度が高いと認識する。 |
過程3: | 得られた違いを原因にフィードバック 室温が6度高いという違いを情報としてフィードバックする。 |
過程4: | 現状から目標に近づくため機能・資源を利用 冷房機能を利用して目標温度に近づける。 |
過程5: | システムに影響を与える(過程0にもどる) 一定時間、冷房機能を利用して温度を下げる。 |
★2回目のフィードバックプロセス
1回目のフィードバックプロセスで室温が24度以下になっていないので、再び同じエアコン動作に対応します。測定された温度は26度になっています。
- ①結果の目標:24℃に設定する。
- ②温度センサーで室温は26度と測定される。
- ③冷房機能を利用して目標温度に近づける。
過程0: | 結果の目標設定 快適な室温として再び24度を設定する。 |
過程1: | 現状の結果測定 温度センサーで室温は26度と測定された。 |
過程2: | 目標と現状の結果の違いを認識 現状は目標よりも2度温度が高いと認識する。 |
過程3: | 得られた違いを原因にフィードバック 室温が2度高いという違いを情報としてフィードバックする。 |
過程4: | 現状から目標に近づくため機能・資源を利用 冷房機能を利用して目標温度に近づける。 |
過程5: | システムに影響を与える(過程0にもどる) 一定時間、冷房機能を利用して温度を下げる。 |
★3回目のフィードバックプロセス
2回目のフィードバックプロセスで室温が24度以下になったので、冷房をOFFします。
- ④冷えすぎで冷房OFFする。
過程0: | 結果の目標設定 快適な室温として再び24度を設定する。 |
過程1: | 現状の結果測定 温度センサーで室温は23度と測定された。 |
過程2: | 目標と現状の結果の違いを認識 現状は目標よりも1度温度が低いと認識する。 |
過程3: | 得られた違いを原因にフィードバック 室温が1度低いという違いを情報としてフィードバックする。 |
過程4: | 現状から目標に近づくため機能・資源を利用 冷房機能を停止して目標温度に近づける。 |
過程5: | システムに影響を与える(過程0にもどる) 一定時間、冷房機能を停止して温度を下げる。 |
時間的に再帰的にフィードバックプロセスを繰り返すと、最終的には目標の24度に近づいていきます。
このとき、温度センサーで測定した室温と結果の目標である24℃の温度差を解消するようにエアコンは動作します。温度差を解消することを目的として冷房機能をON/OFFします。
冬のように、結果の目標である24℃よりも室温が低い場合には、温度差を解消するようにエアコンは動作します。温度差を解消することを目的として暖房機能をON/OFFします。
非常に単純なモデルではありますが、以上が工学的自己フィードバックシステムの考え方です。
- 工学的フィードバックとは、「出力が入力や操作に影響を与えるしくみ」をいいます。
- エアコンの温度制御に使われるフィードバックの考え方を示しました。
- 工学的フィードバックでモデル化されるフィードバックシステムを「自己フィードバック」と呼んでいます。